人々の “健康促進” のために!

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2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2016年1月10日日曜日

2008年映画「幸せのきずな」(Flash of Genius) :
Dr. Bob Kearns の発明と特許をめぐる裁判闘争

雨や雪の降る日に作動する自動車の(断続的に動く) 風防ガラス=ワイパーは、1969年以来、米国を始め、殆んど世界中の車に使用されてきた。 実は、この装置を発明したのは、米国のデトロイト生まれのエンジニア 「Bob Kearns 教授」 (1927-2005) である。勿論、1964年に特許を申請し、許可された。そこで、デトロイトにある自動車メーカー「フォード」に、この装置の共同開発を提案した。

当初、フォードはそのワイパーの開発に関心を示していたが、やがて、彼の特許を無視して、勝手に自社の新車に、この装置を取り付け、 1969年に新発売 (特許泥棒!) してしまった。 そこで、Kearns 教授は米国最大の大企業「フォード」を相手どって、個人で裁判闘争を開始した。 裁判は延々続き、1978年になって、フォードがとうとう裁判に負けて、10億ドルを教授に支払った。勿論、特許を無視して、このワイパーを無断で取り付けていたのは、フォードばかりではなく、「クライスラー」、「GM」、「トヨタ」などである。

クライスラーも1994年にとうとう裁判に負け、30億ドルを教授に支払った。 しかしながら、その他の自動車メーカーは特許の期限切れなどのため、裁判による訴訟を逃れた。 この映画は2003年に雑誌「ニューヨーカー」に発表されたジャーナリスト John Seabrook による「Flash of Genius」(天才の閃き) という記事に基づいて、脚色、映画化されたものである。 この映画の日本語タイトルが「幸せのきずな」となった由来は、この特許裁判で、Kearns 教授を長年支え続けた妻や5人の子供たちの涙ぐましい努力を讃えたものである。 この映画で、最も私の印象に残った場面は、Kearns 教授がチャールズ=ディッケンズの小説「二都物語」を陪審員たちに示しながら、「発明とは一体何か」を説明するシーンである。

フォード側の弁護士は 「このワイパーは発明ではない。なぜなら、既存の部品の単なる組み合わせに過ぎないから」と主張していた。 そこで、教授は「二都物語」の第一節を読み上げて、こう反論した。 「この文章に使われているどの単語も既にオックスフォード字典に収録されている言葉ばかりである。しかしながら、それをユニークに組み合わせるだけで、文豪らしい名文、文学作品が創作 (発明) される。発明の価値は、何と何をどう組合せるかで決まる」。 例えば、化合物Aに化合物Xを付加して、Aの薬理作用が20倍しか高まらなかったら、大した発明 (特許に値いする) とは言えないが、化合物BにXを付加すると、薬理作用が500倍以上高まれば、それは大発見に繋がる。 特にBXがPAK遮断剤である場合、それが市販された時の人類への貢献は計り知れない。

ワイパーに限らず、テレビやLEDなどの発明でも、(特許をめぐる) 同じような訴訟事件が発生した。 ある一連の新薬 (PAK遮断剤) に関する特許を申請中の発明家の一人として、この映画は非常に参考になった。 なお、医薬に関する特許侵害訴訟については、2015年のメルク社に対する塩野義KKによる「HIV インテグラーゼ阻害薬」に関する訴訟の提起が記憶に新しい。

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