人々の “健康促進” のために!

人々の “健康促進” のために!
2015年春、沖縄の琉球大学キャンパス内 (産学共同研究棟) に立ち上げた “PAK研究センター” の発足メンバー(左から4人目が、所長の多和田真吉名誉教授)
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2016年1月11日月曜日

様々な難病や老化現象をめぐる新しい 「内科パラダイム」 の構築

従来の医学、特に病理学は「縦割り」になっていた。 例えば、癌に関して言えば、すいぞう癌、大腸癌、乳癌、胃癌などのごとく、臓器の違いに基づいて癌を分類してきた。 しかしながら、実際には分子レベルで癌の原因を分析してみると、例えば、「PAK」という発癌キナーゼは、どの臓器でも発癌の原因であり、臓器特異性が殆んど見られない。 従って、「PAK依存性癌」(大部分の固形腫瘍) と少数の「そうでない癌」に分類すべき時代が既に来つつある。 更に、PAKが病因になっている病気は癌ばかりではなく、種々の炎症 (喘息、リューマチ、多発性硬化症、胃潰瘍など)、種々の感染症 (エイズ、マラリア、インフルエンザなど)、種々の神経疾患 (例えば、認知症、パーキンソン氏病、癲癇、統合失調症、鬱病、自閉症など) 、糖尿病 (2型)、高血圧、肥満症なども難病も、PAK依存性であることが最近、確立しつつある。  従って、難病を多数の「PAK依存性疾患」と「それ以外の疾患」に大別する必要性が、実用的な見地から求められている。 ここで、「実用性」という意味は、勿論、「病気の治療」を第一に念頭においている。

上記のような新しい医学の「パラダイム」に従えば、(新しく開発されつつある) PAK遮断剤は「PAK依存性疾患」の治療薬に、その他の既存の医薬品は、「それ以外の疾患」の治療薬に、という風に、治療薬を大別することができる。 つまり、表面的な症状の違いを越えて、臨床医 (癌専門医でも、感染症医でも、精神病医でも) は全て、共通の知識と治療法を分かち合うことができる。 そうすれば、これらの治療薬を開発/供給する製薬会社も、抗癌剤とか、胃腸薬とか、抗生物質とか、従来の (縦割り式の) 医薬品の分類から、「PAK遮断剤」と「それ以外の医薬」という、より大局的な医薬品の開発アプローチに転換するであろう。 少なくとも、創薬をめざす薬学者である私は、そう信じている。従来通り個別の臓器を扱わざるを得ない「外科医」の世界では、 このような新しい分子病理学的な「パラダイム」には、多少抵抗があるかもしれないが、専ら薬の投与で難病を治療する「内科医」の世界では、上記の新しいパラダイムに余り強い抵抗はないはずである。 少なくとも、これから医学をめざすフレッシュな若い学生諸君には、このような新しい「パラダイム」に基づく医学的アプローチをぜひお勧めしたい。 

最後に、「老化現象」自体もPAK依存性であることを喚起したい。 頭脳を含めてあらゆる臓器の老化を予防あるいは遅延する(「健康長寿」をめざす) ためには、PAKを遮断あるいは抑制する必要がある。 旧態依然とした (専ら「解剖学」に基づく) パラダイムから、より近代的な (「シグナル分子療法」に基づく) パラダイムに、21世紀の「内科」概念を構築し直すことが緊急に望まれる。

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